2026年2月12日

埼玉工業大学、越生の梅を有効利用する資源化技術を開発

埼玉工業大学(本部:埼玉県深谷市、学長:内山俊一、略称:埼工大、 www.sit.ac.jp/ )は、工学部 生命環境化学科 環境物質化学研究室、兼クリーンエネルギー技術開発センター長の本郷照久教授の研究チームが、埼玉県・越生の梅産業で廃棄されている剪定枝と種を資源化する技術を開発しました。
本件は第31回 全国梅サミット(2月13日~14日)に出展して紹介します。(添付PDFを参照)
本郷教授の環境物質化学研究室は、令和7年度彩の国埼玉環境大賞の県民部門で大賞を受賞しました。

今回開発した2つの研究成果は、梅の剪定枝を資源とし、機能化して利用する技術です。

  1. 研究成果1は、剪定して廃棄されていた梅の剪定枝から、水の浄化や洗顔料などのヘルスケア・美容用の高性能の活性炭を製造する技術です。
  2. 研究成果2は、梅の実から加工食品の工程で発生する副産物の廃棄されている梅の種を材料として、食器用のバイオ炭配合プラスチック成形品の製造を可能にする技術です。

これにより、石油由来のポリプロピレンの使用を削減でき、さらにバイオ炭による二酸化炭素(CO2)を長期固定化することで、地球温暖化の抑制にも寄与します。これまで大量に廃棄されていた未利用のバイオマス資源を有効活用し、循環型ものづくりの技術よって、サーキュラーエコノミー(循環経済)の時代に対応します。
また、越生地域の特産である梅のブランド化を推進し、地域の活性化にも貢献します。

●背景
埼玉県越生町は、関東三大梅林として有名な越生梅林があります。広大な梅林は開花時期に約20,000本の梅が美しく咲く名所です。梅の木は、健全な育成のため年に数回ほど適切な剪定が必要となるため、毎年大量の剪定枝が発生し、多くが廃棄されています。その一部は梅の草木染に利用されストールが製造・販売されていますが、その他多くの剪定枝の資源化や有効活用が課題でした。
また、梅の実を利用した、羊羹、ゼリー、ジャムなどの加工食品の製造過程において、大量の種が副産物として発生し、利用されずに廃棄処分されていました。

●研究成果1:梅の剪定枝の資源化

本郷教授の研究チームは、大量に廃棄処分されている梅の剪定枝を資源化するために、活性炭として利用する研究に取り組みました。その結果、市販の活性炭であるヤシ殻活性炭や石炭系活性炭よりも吸着性能が高い活性炭を製造する技術の開発に成功しました。

この技術では、剪定した梅の枝をシュレッダーなどで細かく粉砕し、高温で炭化したのち、薬品賦活処理を施して活性炭を製造します。複雑な専用装置の新設を要さず、町工場が適切な設備を備えた拠点と連携すれば、量産展開が可能な技術です。活性炭は、汚染水の浄化処理に加え、ヘルスケアや美容分野における吸着材としても利用可能で、資源循環を実現する技術としての応用が期待できます。

比較評価の結果、梅の剪定枝から得た活性炭は、市販活性炭(石炭系・ヤシ殻系)に比べてフェノール*の短時間除去性能で優位を示し、最大吸着容量も石炭系比で約1.7倍、ヤシ殻系比で約1.2倍でした。このことから、本活性炭は地域の未利用バイオマス資源の循環利用に資する素材として有望です。
フェノール*:樹脂等の原料に用いられる有機化合物。特有の臭気と毒性があり、水質汚濁の指標物質の一つ。

本研究成果は、炭素材料学会が発行する学術雑誌「Carbon Reports」に“The preparation and phenol adsorption performance of KOH-activated carbon from pruned branches of Prunus mume (Japanese Apricot)”というタイトルで、2026年3月に掲載される予定です。

●研究成果2:梅の種の資源化
梅の種は硬く、アミグダリンという青酸配糖体が含まれており、ほとんどが廃棄処分されていました。そこで本研究では、梅の種を炭化し、得られた梅種由来バイオ炭と石油由来のポリプロピレンを混合し、射出成形機でお皿に成形加工する技術を開発しました。梅種由来バイオ炭とポリプロピレンの混合物(梅炭25%、ポリプロピレン75%)を成形加工する技術です。

この成形加工技術は、埼玉県吉川市のプラスチック製品加工メーカーのコーワプラス株式会社(社長:塩入英明、工場:埼玉県吉川市、 www.kowaplas.co.jp/ )と連携して開発しました。
汎用的な成形機で、新たに専用の装置を開発・導入することなく、梅の種を原料としたバイオ炭とポリプロピレンの混合物を成形加工できます。今後、同社と協力し、梅種由来バイオ炭/ポリプロピレン複合樹脂の開発を継続していきます。地域の未利用バイオマス資源(廃棄物)を複合樹脂成形品へつなぐ循環型ものづくりのモデルとなります。化石資源の使用削減と、廃棄されている梅の種の活用により資源循環の向上に貢献します。

本郷教授の研究チームは、これまで大学のある深谷地域の課題を解決する研究に取り組んできた経験を活かして、新たに越生の特産の梅の未利用バイオマス(剪定枝・種)から、地域ブランドの向上に貢献する資源化技術を開発しました。

埼工大は、研究成果の社会実装を進め、地域社会の活性化に貢献していきます。

〇彩の国埼玉環境大賞の受賞
本郷教授の環境物質化学研究室は、令和7年度彩の国埼玉環境大賞の県民部門で大賞を受賞しました。
廃棄されるユリの茎からの和紙づくりと資源循環・環境教育の実践に関する取り組みが評価されました。
本受賞については、埼玉県のHPの情報をご参照ください。
www.pref.saitama.lg.jp/a0501/r7kannkyou.html
・受賞者の紹介
www.pref.saitama.lg.jp/documents/277933/r7kankyotaisyo-jusyosya.pdf
・埼玉工大HPの大賞受賞紹介
www.sit.ac.jp/news/260210_1/

○資源循環向けた研究について
本郷照久教授の研究室は、「廃棄物問題」などに着目し、物質化学をベースとした研究・開発により、廃棄物の有効活用を目指した問題解決に取り組んでいます。廃棄物をゴミとして処分するのではなく、未利用資源として活用する新規リサイクルシステムの開発により、SDGs時代に対応するサーキュラー・エコノミーに役立つ研究を推進しています。
これまでにも、さまざまな地域の課題に対応し、ユリの茎、深谷ねぎ残渣、そして駅弁で有名な荻野屋の峠の釜めしの使用後の釜などの資源化の研究で成果を上げています。

・ユリの茎の資源化: www.sit.ac.jp/media/202305094.pdf
・深谷ねぎの資源化: www.sit.ac.jp/media/202410175.pdf
・峠の釜めしの釜の再利用: www.sit.ac.jp/media/202506191.pdf

○埼玉工業大学 工学部生命環境化学科 環境物質化学研究室
hongolab.wordpress.com/
○埼玉工業大学 工学部生命環境化学科 オリジナルHP
dep.sit.ac.jp/lsgc/
○埼玉工業大学 クリーンエネルギー技術開発センター
www.sit.ac.jp/clean_energy/

〇参考情報
埼玉工業大学について
1976年4月に現在の深谷市で大学を設置し、来年創立50周年を迎えます。埼玉工業大学は、工学部(機械工学科、生命環境化学科、情報システム学科)の3学科10専攻と、人間社会学部(情報社会学科、心理学科)2学科4専攻で、全学では計2学部11専攻で構成されます。
大学院においては、工学研究科(「機械工学専攻」、「生命環境化学専攻」、「情報システム専攻」)の3専攻と、人間社会研究科(「情報社会専攻」と「心理学専攻」)の2専攻があります。
学部学生が計2,059名、大学院生が計98名(2025年 5月1日現在)在席しています。

〇添付資料:第31回 全国梅サミット (2月13日~14日、@ニューサンピア埼玉おごせ)

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