2020年4月23日

台湾エクセレンス、医療業界のキープレーヤーとしての地位を継続的に強化 -ビッグデータや新しいテクノロジーで台湾のウイルス対策を強化

コロナウイルス危機に、ビッグデータや新しいテクノロジーで対策を強化

台湾における疾病予防の取り組みは、米国医師会誌の最新号(JAMA: Journal of American Medical Association)に掲載された論文で高く評価されており、現時点で世界17万人を超える(4月22日現在 米ジョンズ・ホプキンス大学調べ)もの尊い命を奪っている新型コロナウイルス(COVID-19)への対応においても、台湾の強みであるICTの総力を挙げた積極的な対応策が、海外のメディアからも注目されています。

台湾は地理的にも経済的にも近いことから、COVID-19の感染症例が中国に次ぐ数に上るものと見られていました。しかし、ウイルスの感染が確認された国の中では、台湾の感染者数や亡くなった方の数は現在限定的にとどまっており、同論文では、台湾国内におけるビッグデータ分析や新規テクノロジー、積極的な検査が感染拡大防止に大きく貢献していると評価しています。

台湾政府は国民健康保険、入国管理、税関のデータベースを統合し、最大限に活用することで、クリニックでの受診中にリアルタイムでアラートを生成したり、感染が拡大する国や地域を最近訪問した人たちをモニタリングできるようにしました。また、出入国者や防疫スタッフができるかぎり密集状態を避け、また日々刻々と変わる出入国規制条件を即座に反映して入国審査を迅速化するために、「入境健康申告書」をスマートフォンなどからも確認、作成、提出できるようにしたり、重度の呼吸器疾患症状を示している患者を事前に割り出すなど、感染拡大を抑制するためさまざまな対策が取られています。

日本と同様、台湾は長年にわたり世界有数のICT大国であり、世界のテクノロジーサプライチェーンの中で主要な役割を果たしてきました。こうした蓄積を、現在産官学が一体となって取り組み、市民の利便性や利益を図るために連携しています。たとえば、薬局の場所や予防対策物資のデータを表示するアプリケーションのプログラムインターフェースを作成するというアイデアをきわめて迅速に実用化できたのは、こうした競争原理を超えた連携が早期に実現できたからです。

*ご参考:台湾のコロナウイルス対策に関する各国メディアの報道(各国語原文)については、以下のURLよりご参照ください en.taitra.org.tw/COVID-19Update

台湾医療機器関連産業の成長・構造と主力産業を融合させたスマート医療ソリューションの開発
台湾は医療産業やヘルスケア産業に関しても、国際的な評価を築いてきました。中でも、こうした評価を高めている要因として挙げられるのは、しっかりとした医療システムとトップクラスの医療従事者、利便性、サービスの質の高さ、ならびに適切な診療報酬政策の存在です。台湾医療関連産業には上流から下流まで一貫したサプライチェーンがあり、また同産業が集積したハブがあることがメリットです。台湾貿易センター(TAITRA)の推計によると、2019年の台湾の医療機器輸出額は、米中貿易摩擦の余波もあり、約33億1,000万ドル(約3,560億円)に拡大しています。台湾が長年、蓄積してきた医療やバイオテクノロジー、IT産業における最先端の研究開発は、今後、幅広い分野で一層の発展を遂げる潜在能力も大きく、これまで以上にグローバルな規模で人々の医療とヘルスケアに貢献していく能力と責任があると考えています。

台湾の産業振興の一翼を担うTAITRA(台湾貿易センター)でも、台湾各産業の強みを統合してさらなる貢献を図ることのできる領域として、スマート医療ソリューションの開発を主要領域として着目し、医療・ヘルスケア業界とテクノロジーやエレクトロニクス・機械分野における進化の融合促進に注力しています。、しています。多彩な戦略プログラムによって、国内企業を中心とした企業のグローバル展開を支援しながら、台湾医療産業や製品・サービスの知名度アップを図っています。その一例が台湾エクセレンス賞です。

TAIWAN EXCELLENCE2020に見る最新の医療・ヘルスケア機器ソリューション事例

TAITRAが主催するこの賞は1993年に台湾政府の経済部によって設立され、研究開発、設計、品質、マーケティングなどの部門別に年1台湾企業を対象として、厳格な審査を経て革新的な価値を提供する各部門の代表的な製品が選出されます。最新の2020年の台湾エクセレンス賞で金賞に輝いた「Caduceus」は、Taiwan Main Orthopaedic Biotechnologyが開発した手術用スマートメガネで、複合現実(MR)技術と手術ナビゲーション機能が搭載されています。もう一つの受賞製品であるMedicalTek社の「MonoStereo Visualization System(モノステレオ・可視化システム)」は、2Dの内視鏡画像を3Dに変換します。両製品以外にも、手術の質を高めより多くの命が救えるようにするための最先端のスマート医療ソリューション製品が多数、台湾から生まれています。

COVID-19の流行拡大によって、台湾の医療・ヘルスケア業界が注力すべき特長が改めて強く認識されました。現在の感染拡大防止策の開発だけでなく、「高齢化」もまた、世界共通の隠れた危機と言えます。医療や所得の増加とともに人々の平均寿命も伸び、各国政府も国民も、健康問題により一層注意を向けるようになっています。TAITRAのプレジデント兼CEOであるWalter Yeh(葉明水)は、次のように述べています。「長期的なヘルスケアが重要課題になり、消費者の中心年齢層も若い世代からシニア世代に移行することによって、経済構造や産業開発の変化を引き起こしています。台湾エクセレンス賞はヘルスケア業界のさまざまな活動に参加して、認知度を高め、海外各地との親善に努めるだけでなく、台湾が2020年のグローバル・ヘルスケア指数ランキングでトップの地位(出展:Numbeo)を獲得した国であることの、認知度も高めていきたいと考えています」

医療やヘルスケアの分野におけるこうした潜在的な需要を念頭に、台湾エクセレンス賞では、ヘルスケアに関連する幅広い分野から受賞製品が選ばれています。たとえば、空気清浄器であれば、TECO社が医療センター向けに提供する「Intelligent Air Quality(インテリジェント空調)」や「Air Conditioning Energy Management System(空調エネルギー管理システム)」があります。また、高齢者向けに設計された製品としては、Merits社の「Foldable Mobility Scooter(折りたたみ式携帯スクーター)」や、Gigantex社の「Carbon Fiber Wheelchair(カーボンファイバー製車椅子)」があります。糖尿病患者のためのフットケア製品としては、2019年にUnite Creative Design社が受賞した「Medical Support Diabetes Foot’s Sock(糖尿病患者用メディカルサポートソックス)」のほか、最新2020年度の受賞製品としては、筋肉の不快感を和らげるAsiatic Fiber Corporationの「Wearable E-Massage Textiles(ウェアラブルEマッサージ繊維素材)」もあります。台湾エクセレンス賞では、介護者の負担軽減のために設計された製品も選出されており、APEX社の「Pro-care Turn(プロケアターン)」は、寝たきりの患者さんの床ずれを防止するために、介護者に代わって定期的に背中の向きを変えるよう設計されています。

医療産業の領域には、研究や設計、製造、規制対応や申請手続きなどテクノロジー以外にもさまざまな複雑な要素が絡み、世界各国の関連機関と緊密に連携しながら進めていく必要があります。また、台湾の医療関連産業全体の認知度を向上させていくためには、ブランドの統合性や信頼性、強力なプロモーション・プログラムも重要です。TAITRAは、台湾企業のブランド力をグローバルに拡大し、医療ヘルスケア産業における二国間や多国間の協力体制を促進するために、全面的な支援を行っていきます。

COVID-19 の感染拡大は、現在世界経済に大きなダメージを与え、MICE業界にも深刻な影響を及ぼしています。TAITRA はこのような危機的状況にある今こそ、医療産業を支援し、世界中の人々のニーズや直面する課題に対処して貢献していくための取り組みを続けていきます。

*本ニュースレターは、激動する国際社会,科学技術、経済、ビジネス、貿易などの潮流のなか、台湾主力産業の「いま」を、台湾貿易センター(日本のJETROに相当)より4回シリーズ週刊でお届けするものです。最終号となる次回、第4回は、ドローン関連産業編 を予定しています。バックナンバーは以下よりご参照ください。
第1回 台湾スマート機械産業の現在 ~製造業高度化の究極のパートナーとして~ (2020/4/9公開)
第2回 5G通信、ネットワーク機器関連産業編~世界各国で本格化する5G展開と台湾ICT産業 -COVID-19鎮静化後の5GとAIoTによる力強い巻き返しに備える- (2020/4/17公開)

台湾エクセレンス賞について

台湾エクセレンス賞(Taiwan Excellence Award)は台湾製品のイメージアップやグローバル市場へのプロモーションを目的として1993年に設立されました。毎年、台湾の経済部による厳格な審査を経て受賞製品が選出されます。研究開発、デザイン、品質、マーケティングなどで卓越した製品のみがその称号を得ることができ、受賞すれば国際的な様々なマーケティングやプロモーションでロゴマークの使用が許されます。6本のアーチラインからなる、台湾エクセレンスロゴマークは「台湾伝統文化における円満を追求する心」を表し、「台湾が国家レベルで認めた優良製品」であることを証明するマークでもあります。 https://www.taiwanexcellence.org/jp

中華民国経済部国際貿易局について
中華民国経済部(日本の経済産業省に相当)国際貿易局(BOFT)は、貿易及び経済協力に関連する政策と規定の実施を担っています。1969年に設立されたBOFTの役割と位置づけは、変化し続ける世界経済と貿易環境のニーズを満たすべく定期的に調整されてきました。BOFTは国内外における貿易関連プロジェクト・イベントにおいて中華民国対外貿易発展協会(日本での名称は台湾貿易センター、略称TAITRA)を指導し、サポートしています。数十年に渡りTAITRAと緊密な連携を保っているBOFTはビジネス、貿易及び投資に関連する重要な政府プロジェクトを今後も引き続きTAITRAに委託し、あらゆる面から台湾の海外プロモーションを行っていきます。

台湾貿易センター(TAITRA)について
1970 年に台湾の対外貿易促進を目的に、台湾政府と業界団体の支援により設立された非営利団体です。本部は台北にあり、台湾国内5箇所の事務所(桃園、新竹、台中、台南、高雄)と世界各地にある63の海外事務所をネットワーク化し、総勢1,300名以上のスタッフが台湾企業の国際競争力の強化、海外企業のビジネスマッチング、世界市場への進出をサポートしています。TAITRAは毎年、台湾で年間約40の国際専門見本市を主催する他、TWTC台北国際展示ホール、TWTC南港国際展示ホール、TICC台北国際会議センターなどの施設を運営しています。1973年に東京で日本事務所を設立以来、台日パートナーシップの強化を目指し、数多くの見本市へ出展するなど、日本・台湾間の貿易振興を図っています。また日本企業に対し、台湾からの調達及び台湾への投資、台湾で開催される国際専門見本市への参観及び出展誘致などを行っています。現在、台湾貿易センターは日本国内に3箇所の事務所(東京、大阪、福岡)を設けています。 https://tokyo.taiwantrade.com/

以 上

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