2022年4月28日

シーメンスのデジタルツイン・ソリューションが実現した海中の農園

  • シーメンスのXceleratorでNemo’s Gardenの水中菜園のデジタルツインを構築、システム上で設計とテストを繰り返し、持続可能な取り組みを現実に
  • 小規模なチームでも簡単にアクセス、エンタープライズ・クラスのイノベーション・ツールセットがデジタル・トランスフォーメーションを推進
  • MindSphereで作成された機械学習アルゴリズムを産業向けエッジ・コンピューティング・デバイスに搭載、リモート・モニタリング、プロセス自動化、設計へのフィードバックが可能に

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア (以下シーメンス) は本日、持続可能な事業として海中での農作物栽培を進めるスタートアップ企業、Nemo’s Garden社が、イノベーション・サイクルの短縮、短期間での事業化と成長拡大を目指して、シーメンスのXcelerator製品ポートフォリオのソフトウェアとサービスを導入したことを発表しました。Nemo’s Gardenは、イタリアのスキューバ・ダイビング機器メーカーであるOcean Reef Groupの社長、セルジオ・ガンベリーニ (Sergio Gamberini) 氏と、その子息、ルカ・ガンベリーニ (Luca Gamberini) 氏によって2021年に創設されました。同社のエンジニア、ダイバー、科学者のチームは、ハーブ、フルーツ、野菜の海中での栽培の可能性を追求してきました。Nemo’s Gardenが開発した水中菜園は、有利な海中の環境要因 (温度の安定性、蒸発水の生成、二酸化炭素の吸収、酸素の不在、害虫からの保護) によって作物の栽培に理想的な環境を生み出すように設計された、ユニークな水中温室です。

同社は、水中菜園のプロトタイプを使ってさまざまな作物の収穫に成功しただけでなく、この環境で栽培した作物が、通常の方法で栽培した作物よりも栄養豊富であることも実証しました。目標達成のための次の大きなハードルは、このプロトタイプをどんな海中環境にも設置可能なソリューションにすることでしたが、その解決に再び10年をかけるわけにはいきませんでした。

過酷な冬、短い夏、初期に課せられた海底利用上の制約により、Nemo’s Gardenの栽培サイクルは年1回に限定されました。これは、イノベーション・サイクルも年1回になることを意味します。栽培サイクル中の設計変更、長期の実地テスト、手間のかかる手作業のモニタリング・プロセスに悩まされたNemo’s Gardenのチームは、イノベーションのスピードを上げ、オペレーションの規模を拡大する方法を探りました。チームは、目標達成のために最先端テクノロジーを利用する方法についての助言を求めて、TekSea社のマッテオ・カバレローニ (Matteo Cavalleroni) 氏を訪ねました。そこでの協議の結果、シーメンスがプロジェクトに招かれました。Nemo’s Gardenが開発を次の段階に進め、事業化、商用化を目指すために、Xcelerator製品ポートフォリオのソフトウェアとサービスを利用することが必要とされたのです。

Nemo’s Gardenの共同創設者であるルカ・ガンベリーニ (Luca Gamberini) 氏は次のように述べています。「シーメンスのデジタルツイン・テクノロジーについて知ったとき、私は一瞬で魅了されました。Nemo’s Gardenは独特なシステムであり、ひとつひとつの設置先ごとに、そこの環境に合わせて調整する必要があります。その環境を事前にモデル化することができれば、課題を予め洗い出し、最適な対処方法を見つけておくことができます。まず、菜園ドームの形状を知り、その周囲の水の流れを理解することが重要です。続けて、菜園ドーム周囲の構造で、どこに負荷がかかるかについて理解を深めることができました。さらに、日差し、気温、その他すべての物理的要因が相互に絡み合い、植物に影響を与えるかについて理解を進めました。すべて、弊社のシステムを再現したデジタルツインのおかげです。」
Nemo’s Garden水中菜園の完全なデジタルツインは、シーメンスのNX™ソフトウェアによって構築されました。このソリューションの適用は、設計開発の成果を進化させただけでなく、菜園ドーム内の育成条件、設備がその水域に与える影響、設備全体が設置される環境そのもののシミュレーションを可能にしました。これらはすべて、シーメンスのSimcenter™ STAR-CCM+™ソフトウェアによって実現されたものです。こうしてNemo’s Gardenのチームは、気象条件、季節、短い栽培期間などの制限、ダイビングやモニタリングによる制約を受けずにすむようになりました。水中菜園への適合についても仮想的にテストできるようになり、チームは設計の改良を頻繁に行うことができるようになりました。

エッジによるモニタリング
Nemo’s Gardenでは、菜園ドームを物理的に設計するほかに、植物を育成、追跡、収穫するプロセスを最適化し、その規模を拡大する必要がありました。データ収集を行う専門のダイバーを派遣する必要もない、持続可能なビジネスを実現するために、完全にデジタル化され、自動化されたアプローチが構築されました。ここでは、ソフトウェアによる従来農法の自動化で培ったシーメンスの豊富な経験が活かされました。

対象作物の従来農法による栽培サイクルを撮影した既存の映像と、栽培から得られた各種成長段階、健康状態に関する参考データが、シーメンスのMindSphere®サービスを使って分析されました。そこから、シーメンスは植物の成長とドーム内の環境条件を監視するための機械学習アルゴリズムにデータ蓄積を行いました。

各菜園ドームに配備したシーメンスの産業向けエッジ・コンピューティング・デバイスにこのアルゴリズムを搭載すると、シーズンを通じてどこからでも、クラウドベースのダッシュボードを使って、植物をリアルタイムに監視できるようになります。次のシーズンには、これらの産業向けエッジデバイスにアクチュエーターを接続し、空気循環、湿度、水やり、施肥などでシーズン全体を通じて自動的に調節できるようにします。これが水中菜園に向けてのグローバル農業サービスの基盤となり、世界の各海域向けに調整されます。

Nemo’s Gardenの挑戦は、友人たちとの夕食の席での話題から始まりました。そのユニークな発想に、デジタル・トランスフォーメーションの手段を適用することで、事業としても現実的で、持続可能な、世界中に展開できる水中菜園プラットフォームを開発することができました。新しく設置された水中農園は、次の栽培期まで使用できませんが、栽培環境のデジタルツインを作成したことで、チームは世界展開に向けて設計のさらなる最適化とプロセス自動化を計画し、前進を続けることができます。

シーメンスの持続可能性担当バイス・プレジデントであるエリン・デボラ (Eryn Devola) は次のように述べています。「デジタライゼーションは、大企業だけのものではありません。すべての企業のものです。 実際に、小規模な企業やスタートアップ企業が大きな成果をあげることは、よくあることです。 シーメンスがスタートアップ企業とともに行うことには、各社が世界に対して持つ影響力を増大させ効果があります。私たちはイノベーションを支援し、スピードアップさせます。人が中心となる技術を用い、環境にも良い影響を与えながら、食の充実のために活動しようとする人たちの情熱に触れれば、誰でもワクワクするものです。」

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアは、エンジニアリング、製造、電子設計といった技術的分野を結合し、「将来」の目標を今実現するために努力を続けるデジタル企業を支援しています。 同社のXcelerator製品ポートフォリオは、あらゆる規模の企業がデジタルツインを作成 / 活用することで、イノベーションを推進するための新しい洞察力や機会、そしてさまざまな段階における自動化を促進する支援をします。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアおよびXceleratorソフトウェア / サービス・ポートフォリオの詳細については、 siemens.com/software をご覧いただくか、LinkedIn、Twitter、Facebook、Instagramをフォローしてご確認ください。Siemens Digital Industries Software –– Where today meets tomorrow.

シーメンスデジタルインダストリーズ(DI)はオートメーションとデジタル化における革新的なリーダーです。パートナーやお客様と緊密に協力して、プロセス業界とディスクリート(部品組み立て)産業のデジタル・変革を牽引します。DIはデジタルエンタープライズポートフォリオによって、あらゆる規模の企業がバリューチェーン全体にわたって統合とデジタル化を実現するための、包括的な製品、ソリューション、サービスを提供します。各業界固有のニーズに合わせて最適化された、DIのユニークなポートフォリオは、お客様の生産性と柔軟性の向上をサポートします。DIは常にポートフォリオに革新性を追加し続け、未来の先端技術の統合に努めています。DIのグローバル本社の所在地はドイツのニュルンベルクで、世界に約76,000名の従業員を擁しています。

シーメンスAG(本社:ベルリンおよびミュンヘン)は、170年にわたり、卓越したエンジニアリング、イノベーション、品質と信頼性、そして国際性を象徴するグローバルなテクノロジー企業でありつづけています。ビルや分散型エネルギーシステム向けのインテリジェントなインフラストラクチャー、プロセス産業や製造業向けの自動化、デジタル化の分野を中心に、世界中で事業を展開しています。シーメンスはデジタルと現実世界を結びつけることで、お客様と社会に貢献します。鉄道、道路交通のスマートなモビィティー・ソリューションの主要サプライヤーであるモビリティを通じ、シーメンスは旅客および貨物サービスの世界市場の形成をサポートします。さらに上場会社であるSiemens Healthineersの過半数の株式を保有することで、医療技術やデジタル・ヘルスケア・サービスの世界の大手サプライヤーでもあります。また、送電および発電の世界のリーダー企業であり2020年9月28日に株式上場したシーメンスエナジーの過半数未満の株式を保有しています。2021年9月30日に終了した2021年度において、シーメンスグループの売上高は623億ユーロ、純利益は67億ユーロでした。2021年9月30日時点の継続事業における全世界の社員数は30万3000人です。詳しい情報は、 www.siemens.com にてご覧いただけます。

この資料は2022年4月7に米国テキサス州プラノより発表されたプレスリリースを翻訳したものです。

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